「かぼちゃの馬車」のビジネスモデル、評判、失速の理由。わかりやすく解説。(2)

「かぼちゃの馬車」のビジネスモデル、評判、失速の理由。わかりやすく解説。(1)》の続き。

「かぼちゃの馬車」に投資したオーナーとは?

前編でも書いたように、物件のオーナーとなった人は、大半が中間管理職などの中年サラリーマンです。自己資金があったというような人は稀で、全額銀行から融資を受けて購入した人が少なくないといいます。

以下の様なケースが想像されます。
とりあえず今は、それなりの企業に勤めていて安定収入もあり順当に生活しているが、老後が年金だけでは不安、今のうちに何か不労所得の手段を講じておきたい。
何やら最近、不動産投資が良いという話がよく耳に入る。アパートやマンションの一棟買い?…さすがそこまでは自己資金が足りない。
何々?「かぼちゃの馬車」というシェアハウスなら、自己資金ほぼゼロでも銀行の融資が受けられ、運営会社が家賃保証もしてくれるって?
これは、乗らない手はない!
そんな風に考えたのではないでしょうか。

「楽待 不動産投資新聞」(2018-1-25)に、こんな実例が紹介されています。

大手企業に勤務するAさん(川崎市在住、45才)は2016年夏、かぼちゃの馬車(杉並区、全18室・物件価格約2億円)を購入した。スルガ銀行から金利3.5%、30年のフルローンで融資を受けた。
きっかけは、不動産投資で成功している同僚に、かぼちゃの馬車の販売会社の営業マンを『信頼できる』と紹介されたことだった。
スマートデイズが物件を一括借り上げ(サブリース)して若い女性に貸し出し、オーナーには毎月保証した賃料を支払うという説明で、渡されたシミュレーションによると利回りは7.8%となっていた。
「これがちゃんと履行されるのであればなかなかいい収益になると思ったし、営業マンも丁寧な印象で信頼しました」。
保証賃料は月122万円で、管理費を引いた113万円が入金される。月々の返済は約100万円で、13万円から諸費用を引いた額が手残り。物件は2017年4月から稼働し、5月以降は契約通りの保証賃料が振り込まれていた。

しかし、2018年1月末以降、保証された賃料は振り込まれなくなったのです。
大手企業勤めとはいえ、毎月100万円の返済は不可能でしょう。それが可能ならそもそもこんな投資に手を出さなかったはずです。

杉並区に、かぼちゃの馬車は29棟あり、全18室に該当する物件はいくつかあります。
該当物件の家賃は3.3万〜4.5万円、家賃収入の合計は最大でも81万です。
おかしいですよね、保証された122万に全然届きません。
18室で122万の家賃収入ということは1室当たり約6.8万円。かぼちゃの馬車で家賃がそんな高い物件は、超人気の中目黒、高輪くらい。
つまり、運営会社のスマートデイズは、サブリース事業では収益が出るどころか逆ざやだったのです。

しかも、杉並区内の物件の空室状況を見ると、大半が70%以上空いています。実際の家賃収入は、良くて40万円程度ではないでしょうか。

なぜ「かぼちゃの馬車」は、行き詰まったのか?

上記で説明したように、株式会社スマートデイズは、当初からサブリースでは利益を上げられない仕組みでした。
じゃあ、どんな収益からオーナーに賃料を支払っていたのか。

スマートデイズは、新たな物件をどんどん建てて販売していました。その収益が1億円の物件一棟あたり3〜4千万円あったのではないかと言われています。そこから、既存物件のオーナーに賃料を支払っていたわけですね。
シェアハウス、安アパートの需要は限られているため、永久に物件を作り続けることは不可能ですから、いつか飽和状態になります。

サブリース自体で収益が上がらない以上、行き詰まるのは必然のようにも思えます。

しかし、運営会社は別の収益源も考えていました。
それは入居者に仕事を紹介するなどして、紹介先から紹介料を得るというものです。
それ以外にも入居者を対象としたビジネスを色々画策していたようです。
しかし、これは見込んでいた収益には程遠かったようです。

融資していた銀行も、このまま貸付を続けても行き詰まることに気づいたのでしょう、2017年秋に融資の基準を引き上げました。
そのため、新たな物件の販売が失速、株式会社スマートデイズの収益は一気に悪化したのです。

被害者はこれからどうなる? 悪いのは誰なの?

とりあえず、オーナーが最大の被害者でしょう。
2018年1月末以降、予定されていた入金がなくなり、それでも銀行に毎月数十万〜百万円ずつ返済しなくてはなりません。
オーナーは各自、預貯金を切り崩して支払うことになりますが、多くは数ヶ月で底を突くのではないでしょうか。

スマートデイズは、当初の計画通り若い女性をターゲットにしたシェアハウスでは部屋を満室にできないことを認め、民泊や貧困者向け住宅などへの転用で、とにかく家賃収入を上げる方向へシフトさせる考えのようです。
しかし、それも上手く行くかどうか不明ですし、満室になっても当初想定した家賃収益は到底見込めないでしょう。オーナーの収入は大幅な減額が必至です。

最初に上げた大企業勤務Aさんの例で説明すると、オーナーに約束した122万が60万になったとして、オーナーは毎月40万円を自分の本業の給料で負担しなければなりません。
そんなことを長く続けるのはおそらく不可能でしょう。

物件自体はオーナーの所有物(正確にはローン返済があるので銀行の所有物)ですから、スマートデイズとのサブリース契約を解除し、自分で管理し入居者を探すか他の会社にサブリース契約を乗り換える方法もあります。
しかし、いずれの場合も、122万には到底及びませんよね。だって、部屋が当初の想定通りの家賃で満室になったとしても80万円程度なんですから。
実際は家賃をかなり引き下げる必要があるでしょうし、管理委託すれば最低でも20%は持って行かれます。
さらにそこから諸経費が引かれます。固定資産税もあります。
おそらく、毎月の返済が50万円くらい足りないということになるのではないでしょうか。

いっそ、売ってしまえば良い?
1億円で購入した物件ですが、そもそも1億円の価値はなかったようです。アパートや宿泊施設以外には使えない物件ですから、そこから得られる収益性が査定のポイントになるでしょう。おそらく、良くても6千万円くらいでしょうか。ってことは、オーナーは4千万円損することとなり、「売る」という選択も苦渋の決断となるでしょう。

つまり、どっちに転んでも、オーナーが多額の負債を被ることは避けられないと思われます。
多数の自己破産者を出すのは時間の問題と言えそうです。

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