「かぼちゃの馬車」のビジネスモデル、評判、失速の理由。わかりやすく解説。(1)

これは2018年初頭の段階で書かれたものです。
“かぼちゃの馬車”問題は、今も係争中ですので、記録として残しておきます。

ベッキーのCMでおなじみ、シェアハウス「かぼちゃの馬車」が、どうもタイヘンなことになっているようです。
そもそもシェアハウスって? サブリースって? 誰が悪くて、誰がタイヘンな目にあってるの?
そのあたりの事情を、なるべく分かりやすく解説していこうと思います。

今、いったい何が起きているのか?

オーナーに対する家賃保証の約束がホゴにされる

東京を中心に「かぼちゃの馬車」というシェアハウスを運営する株式会社スマートデイズが2018年1月17、20日の両日、都内の貸し会議室に物件オーナー(スマートデイズからシェアハウスを購入しその物件の管理をスマートデイズに委託している人)を集め、状況説明を行いました。
そこでオーナーに通告されたのは「今月以降の家賃支払いができなくなった」ということでした。

オーナーとはその大半が普通のサラリーマンで、老後の生活費の足し等の目的で、シェアハウスに投資した人たちです。実は昨年10月に、家賃支払の減額が通知されたばかりでしたが、減額どころか、今度はまったく払えないと言われたのです。
ほとんどのオーナーは銀行から1億円前後の借金をしてシェアハウスをスマートデイズから購入していて、毎月数十万〜百数十万円の返済を行わなければなりません。スマートデイズはオーナーからサブリース契約を受けて入居者の募集や家賃の集金を代行、オーナーと家賃支払保証を約束していました。

しかし、それの約束が破られれば、オーナーは自腹で銀行に返済しなくてはなりません。普通の会社員に月何十万もの返済ができるわけはありませんよね。
オーナーは自己破産するしかない状況に追い込まれているというわけです。

こうした問題は、今「かぼちゃの馬車」が一番目立っていますが、ほかのシェアハウス運営会社でも起きているようです。

「かぼちゃの馬車」は、どんなシェアハウスなの?

テレビの影響もあり、昨今シェアハウスは大人気

そもそもシェアハウスって何でしょう?
テレビ番組「テラスハウス」をイメージする人が多いことと思いますが、主に若い人たちが共同生活する賃貸住宅です。
共有のリビングルームがあり入居者同志のコミュニケーションが図れることが大きな特徴で、各自のベッドルームは個室、シャワー・トイレ・キッチン・洗濯機なども共有、というのが標準的なスタイルです。
テレビ番組の影響もあり、昨今人気を集め物件も急速に増えています。
シェアハウスの大きなメリットは主に2つ。「一人暮らしの寂しさがない」ことと「ひとりで部屋を借りるより安上がり」なことです。

夢を叶えたい女性を応援するシェアハウス

「かぼちゃの馬車」はシェアハウスですが、女性専用であること、個室(一棟あたり10〜20室程度)にはベッドや冷蔵庫、テレビなどが備え付け(物件によって料金が込みの場合と別途の場合あり)であること、敷金礼金などの初期費用が1万円のみであること、共有のリビングスペースがないことが特長となっています。
個室の広さは概ね四畳半程度。
賃料は、光熱費を含む共益費+家賃+保険等で最低5万から最高で9万円くらいまで、場所によって異なります。光熱費込みであることを考えると、普通のワンルームアパートを借りるよりは、多少割安かな?と思われます。
共有リビングがないのはシェアハウスとしてはデメリットですが、特に入居者同志のコミュニケーションを取りたいと思ってない人には、逆に好都合と言えるでしょう。

かぼちゃの馬車、公式ウェブサイト

「かぼちゃの馬車」のシェアハウスをもう少し詳しく見ていくと…

木造で、標準的な物件の間取りはこんな感じです。これは1階で、2階も同様。
あらためてこうして見ると、共有リビングがないから、やっぱりシェアハウスとは言い難いですよね。
ってゆうかこの間取り、50年位前にはよく大学の近くにあった学生向け安アパート・下宿と似てますよね。トイレ・水回りは共同という物件、今も古いアパートなどで見られるとは思います。
ようするに「かぼちゃの馬車」は、シェアハウスではなく単なる安アパートでしょうか。
実際、壁が薄く隣の音は筒抜けで、作りとしては安アパートそのもの、という指摘もあるようです。

立地はほとんどが都内ですが、その中でも一番安い部類の物件を見てみましょう。

西武池袋線・石神井公園の物件 1階の場合、賃料2.6万円+共益費2万円+会員制度保証会社支払い等0.3万円で合計約5万。月に5万でガス水道電気料金も込みなら、けっこうお得感がありますね。
石神井公園駅は急行停車駅で、池袋までノンストップ10分で行けますし、石神井公園は散歩には素晴らしい公園です。
かなり良いんじゃない?そう思うのはちょっと待ってください。 この物件、駅から2キロくらいあるんです。徒歩30分くらいでしょうか。
それなら、池袋から30分の駅で駅から5分の物件の方が良いような気もしますよね。やっぱり、安いのには訳がある、ということです。

逆に高めの人気立地物件を見てみましょう。

東急東横線/地下鉄日比谷線・中目黒の物件 1階の場合、賃料6.7万円+共益費2万円+会員制度保証会社支払い等0.3万円で合計約9万。
渋谷・六本木に直結。中目黒駅までは徒歩8分です。
たしかに、専有のバス・トイレ・キッチン付きアパートを借りるよりは、光熱費込みでもありますし、2〜3万安いかも知れませんが、シェアハウスとしては高めにも思われます。

「かぼちゃの馬車」のビジネスモデルとは?

サブリース・ビジネスのようだが、物件販売が大きな収益源

『シンデレラは夢を叶えるために馬車に乗った』
この広告コピーからわかるように、地方から夢を追って首都圏に出てきた女性にターゲットを絞っています。
夢実現のために家賃などの生活費は少しでも節約したいだろうし、初期費用も最低限に抑えたい。
そんな女性たちを応援するシェアハウスが「かぼちゃの馬車」です。



このベッキーのCMを覚えている人も多いことでしょう。
ベッキーにとってはスキャンダル後、初となったCM出演でした。
素晴らしい映像美ですね。制作費だけで数千万円は掛かっていると思われます。

「かぼちゃの馬車」の運営会社は、株式会社スマートデイズ(以前はスマートライフという会社名でした)。その手順を紹介すると….。

1.スマートデイズは、まず土地を取得しシェアハウスを建てます。

2.不動産投資したい人に仲介業者を通してシェアハウスを販売します。買い手はシェアハウスのオーナーになるわけですね。ちなみに、買い手は大半が普通の会社勤めのサラリーマン(以下、普通サラ)です。

3.買いたい人に融資してくれる銀行を紹介します。シェアハウスは一棟あたり1億円くらいしますので、普通サラが簡単に購入できません。そこで、銀行からお金を借りて購入するわけです。
普通サラが億単位の借金はかなり勇気にいることですが、スマートデイズ社とサブリース契約をすれば、空室の有無の関わらず家賃として毎月60万円を保証すると言います。その中から45万円を銀行返済に充てる算段です。
それなら大丈夫!普通サラでも何とかなると考えますよね。(金額は一例)

4.物件を購入したオーナー(普通サラ)はスマートでデイズ社とサブリース契約します。
入居者の募集や管理業務などは一切スマートデイズ社が代行して行ってくれます。
だから、普通サラとしてフルタイムの仕事を持っていても、アパートの大家さんの経験がなくても、オーナーになれるという仕組みなのです。
これが「サブリース」と呼ばれるシステムです。
スマートデイズ社から購入した物件を、またスマートデイズ社に貸す、ということですね。

実は、スマートデイズ社は、サブリースそのものによる収益より、物件をオーナーに販売する時点で多額の利益を上げています。ここが大きなポイントです。
また、入居者に仕事を紹介することでも大きな収益が上がる計画でした。

かぼちゃの馬車、入居者の感想や評判は?

実際に入居した人やなどの感想を拾い集めてみました。

●2017年1月、Yahoo!知恵袋の解答された入居者の方A
『内装がかわいくて、部屋自体は結構気に入っていますが、とにかく管理会社のスマートライフの対応が悪いです。連絡しても返信をよこさないとか、会社訪問の際も、平気で客を何十分も待たせます。物件数が増えすぎて、社員が足りないんだろうなって思います。
部屋ですが、壁は結構薄いですねww声は結構聞こえます。
シャワーが綺麗なのはありがたい。ここは掃除もちゃんとしてくれるので嬉しいです。トイレもきれいですね。水回り関係は満足してます』

●2017年12月、Yahoo!知恵袋の解答された入居者の方B
『「木造であれば隣の部屋の音が少し漏れるのは致し方ない」という意見もありますが、少し漏れるとか、そういうレベルではないですよ。本当にペラペラな壁で、隣の部屋の人と壁越しに会話ができるレベルです』

●2017年12月、Yahoo!知恵袋の解答された入居者の方C
『プライベート空間が保てる。基本的に不思議とほかの人と時間がずれるのか、あまり会うことはない。24時間セキュリティーがあるっていうのも安心ですし、玄関先に防犯カメラがあるのもいいです。家電とか家具とかついてるのもお得だと思うし、ネット代とかも共益費に含まれてて無料なのでそれもお得かも。しかもきれいでかわいい部屋が多いです。冷蔵庫が部屋にあるのはいいですね。ただ小さいのが不便ですけど』

●2018年1月、Yahoo!知恵袋に投稿された方
『海外の入居者の方の共用部の使用があまりにも汚過ぎて早々に出たく途中解約を申し出たところ、契約書にあった違約金としての家賃2ヶ月分+ハウスクリーニングは理解していましたが、解約申請してから2ヶ月分のの家賃も発生すると言われました』
契約書に書いてあったことかも知れませんが、これは要注意ですね。

■また、SHARE PARADEというサイトの管理者、柴田直希さんは、2016年の時点でこのように指摘しています。自らもシェアハウスに暮らすという柴田さん、さすがですね。
『・建築費が異常に高額 → 1部屋200~300万円の建築コストが上乗せされています。(約1棟で2,000~4,000万円程度の上乗せ)
・30年定額家賃保証しているが、5年後に条件見直し条項が契約に織り込まれている → 5年後家賃改定がされる可能性が高い。
・もともとの家賃設定がシェアハウスの家賃相場の1.5~2倍の設定 → 見せかけの利回りを上げています。入居率が低いです』

SHARE PARADISE

続き→「かぼちゃの馬車」のビジネスモデル、評判、失速の理由。わかりやすく解説。(2)かぼちゃの馬車に投資したオーナーとは?/なぜ「かぼちゃの馬車」は、行き詰まったのか?/被害者はこれからどうなる? 悪いの誰なの?

 時事 TOP
できごと、政治、経済問題など

「かぼちゃの馬車」のビジネスモデル、評判、失速の理由。わかりやすく解説。(1)” に対して1件のコメントがあります。

コメントは受け付けていません。