リニアの需要予測、経済効果の根拠が「子供騙し」過ぎて….。(産経新聞の記事)
2027年に東京-名古屋間の開業を目指し着工した、リニア中央新幹線。
ミライの鉄道、夢の実現などと期待される一方、この計画に対しては反対の声も多く、採算性や国費投入、トンネル工事などに対する疑問も尽きません。
これまでも、リニア中央新幹線の需要予測や経済効果には、計画実行に都合の良い“結論ありき”なこじつけが多く見られましたが、またまたトンデモナイ、ハチャメチャな屁理屈で煙に巻くような試算の登場です。
Sankei Biz リニアの経済効果最大化 国交省、駅周辺整備など年度内に調査開始
中間駅の建設が見込まれる神奈川県の相模原周辺は、リニアを利用すれば成田空港より中部国際空港の方が移動時間が短くなる。
相模原は近接する圏央道を経由すれば日光に近く、前もって駅周辺にバスターミナル拠点を整備すれば、中部国際空港から訪日外国人旅行客を呼び込み、日光に誘客するルート形成が可能になる 2016.10.25
と、この記事に書かれていて、中部国際空港から日光に行くルートの方が、成田から行くより10分早いってことになってる。《下図を参照》
Sankei Bizより転載 |
まず言っておくべきは、相模原と日光は全然近くない!
たしかに圏央道など高速道路を利用できますが、Google Mapsでみると…。
相模原-日光 道程 187km 所要時間(車)2時間25分
成田-日光 道程 189km 所要時間(車)2時間31分
と、なります。相模原・日光間は、成田・日光間とほぼ同じくらいですよ。
だから、そもそも成田から日光に向かうために、相模原を経由するなんてルートは本来あり得ないわけで、比較の前提がおかしいです。
ってゆうか、無理矢理過ぎる。相模原なんかに出ず、成田から直で北上し日光に行くのが一番早いに決まってますね。
次に、相模原に停まるリニアは1時間に1本くらいの予定です。大半は東京・名古屋間ノンストップになるので、各駅停車を一本見送ってしまったら1時間待つことになります。
更に言うと、名古屋・相模原間が30分も大嘘。相模原に停車するのはおそらく各駅停車のみ。30分は名古屋から相模原にノンストップの場合。でもそんなダイヤが組まれるはずもないので、実際は50分以上掛かるでしょう。
つまり、こういうこと。
リニア推進を主張するメディアは、こういう稚拙なロジックで国民を騙そうとしてるのか、それともマジに大馬鹿なのか。
どっちにしても酷い話です。産経は一応大手メディアグループの全国紙ですからね、ニッポンの先行きを本気で案じずにはいられないです。
こんなのはホンの一例。推進側の根拠は、概ねこんな調子で、小学生でも気づくような矛盾を前提に進められています。
そもそもリニアは、コストが合うはずがないのです。
リニアの軌道建設コストは1キロあたり200億円と言われてるけど、最終的にはその倍位以上になる可能性もあると言われています。しかもこれには周辺への補償費用は含まれていません。
飛行機なら、空港さえあれば、空港と空港の間はゼロ円ですから、比べるまでもないでしょう(もちろん飛行機ならではの経費〈空港使用料等〉があることは承知していますが)。
今回取り上げたのは産経新聞の記事ですが、国交省の発表資料に基いて書かれた記事なんですよね。周辺開発の例として相模原を引き合いに出してるのも、国交省資料と思われます。他社記事でも同じような記述がありましたので。なので、国交省の発表資料自体にそもそも問題があるようにも思われます。
さらに言うと、経済波及効果とか需要予測は、民間のシンクタンクに発注されたりするわけですが、受注したシンクタンクが発注者の意向に反すような調査結果を出すわけにはいかないから、強引に辻褄を合わせて、クライアントの求めるような結論を導き出す傾向があります。
というわけで、皆さん、需要予測の類は眉に唾して読み解くようにしましょう。
新聞に書いてあるからと、安易に信じてはいけません。